持病のある人のリアルな婚活事情
持病を1行書いた翌月、申し込みが200人から10人になった
プロフィールに「持病」についてたった1行書き足しただけで、翌月の申し込みが200人から10人に激減してしまった男性がいます。
それは、日常生活にはまったく支障のない、子供の頃の病気の話でした。

残酷ですが、これが結婚相談所の現場で起きているリアルな現実です。
知られたくない。
でも、隠して進めるのは誠実ではない気がする。
いつ、誰に、どこまで伝えるべきなのか?
持病を抱えて婚活している人なら、一度は必ずぶつかる深く苦しい問いだと思います。
この問題は……正直に言うと、本当に取り扱いが難しい。
突き詰めて考えれば、「結婚相談所の根幹」を揺るがしかねない重いテーマだからです。
今回は、全国14社の結婚相談所に直接聞いた本音と、私が現場で見てきた痛いほどのリアルを、誤解を恐れずにできる限り正直に書きます。
持病があるだけで、婚活は本当に不利になるのか?
これは本当に、正解が出しにくいというか、悩みが深い問題です。
持病のある人は、日々の体調や色々な苦しみと戦いながら、結婚についても人一倍深く悩んでいるのだろうと思っています。

打ち明けたら嫌われるのではないか
でも隠して結婚するのは違う気がする
この二つの葛藤のあいだで、何年も立ち止まっている人を私はたくさん見てきました。
結論から言うと、残念ながら「不利になる場面」は確かに存在します。
ただ、これは単に「持病があるからダメ」という個人の魅力の問題ではありません。
相談所というシステムが持つ「信頼性の土台」に触れる話でもあるのです。
結婚相談所で婚活する最大のメリットは、プロフィールが徹底的に信頼できる点にあります。
収入証明、独身証明、卒業証明など、すべてが書類で裏取りされています。
だからこそ、プロフィールに「書いてあること」と「書いていないこと」の重みが、他の出会いの場とは比べ物にならないほど大きいのです。
ほとんどの人がプロフィールを見るとき、自分の希望条件に合うかを探すと同時に、持病や経歴などの「できれば避けたい条件」がないかも慎重にチェックしています。
私自身も、自分の結婚相手のことは当然知っておきたいですし、婚活の場であればなおさらシビアに見るはずです。
この「信頼できるプロフィール」という土台の上で、持病をどう扱うか?実はここ数年で、このルールの前提が大きく変わってしまいました。
2018年で婚活者の不利は増した――ルール変更で起きたこと
制度が変わって何が起きたか、まずは結論を一行で言います。
昔は「問い合わせ欄」があり、相談所同士で事前に確認できた。今は、書かない自由と引き換えに、書いた瞬間に選別される世界になった。

今のルールでは、プロフィールに持病を記載しなくても構いません。
2018年頃から個人情報保護の観点が強まり、「公表したくなければ記載しなくてもいい」という流れになったからです。
しかし、それ以前は「必ず記載すること」が絶対のルールでした。
当時は、病名を赤裸々に公開するのではなく、「問い合わせ項目あり」「確認項目あり」という形で伏せて記載するのが必須でした。
気になる相手がいれば、お見合いを申し込む前に、こちらの相談所から相手の相談所へ「お問い合わせ項目ってどのような内容ですか?」と直接聞くことができたのです。
もし、それを記載せずに後から発覚したら――
なぜ記載していなかったのですか!ルール違反でしょう!
後でメチャクチャ怒られたものです。
当時は記載していない側が明確なルール違反として責められ、平謝りするしかありませんでした。
「すみません、軽度なので記載する必要はないと思っていました」と苦しい言い訳をするケースも多々ありました。
ところが今は、その怒りをぶつける相手すらシステム上から消えてしまいました。
書かない自由が与えられた代わりに、正直に書いた人は、理由も告げられずに静かに選ばれなくなっていく。
この制度変更で一番損をして苦しんでいるのは、誠実に書こうとした当事者なのではないかと私は思っています。
「書いた瞬間、200人の申込が10人になった」――現場で起きている現実
冒頭でお話しした、すごく魅力的な男性会員さんの話をさせてください。
彼は入会後1ヶ月で200名近くから申し込みがありました。

私もすぐ横で、その圧倒的な数字を見ていた人間です。
しかしある日、彼がどうしても不誠実な気がすると言い、プロフィールに「子供の頃の病気が原因で右耳の聴力が弱いです。日常生活には全く問題ありません」と記載しました。
すると、翌月の申し込みは10人も来ませんでした。
200人が10人になったのです。
日常生活には全く支障がない、子供の頃の話です。
彼の魅力が下がったわけでも、年収などの条件が変わったわけでもありません。
書き足したのは、ただ誠意を示すための一行だけ。
それでも、これが現実です。
残酷なのは、相手相談所から「どのような確認事項ですか?」と聞かれることはほとんどなくて、ただ単に申し込まれる数が減るという点。質問もされない。議論も起きない。ただ、静かに選ばれなくなる。
システム上はワンクリックで次の候補者を探せるため、「少しでもリスクのありそうな人は避けておこう」という無意識の選別が働いてしまうのでしょう。
会員さん本人には、その残酷な選別のプロセスは見えません。
見えるのは、ぱったりと届かなくなった申込の件数だけです。
だから昔は、「ルール違反だと認識しているけれど、あえて書かなかった」という相談所がいたのも事実です。
「確認事項あり」にチェックを入れただけで、お見合いが組めなくなるからです。
カウンセラーが「指摘されたらそのときに謝りましょう。まずは多くの人と出会うことが最優先です」と作戦を立てることもありました。
中には「あ、その話は聞かなかったことにしますね」と言って、プロフィールに何も記載しない相談所もありました。
ここは、誠実さと戦略のあいだで揺れ動く、本当に微妙なラインなのです。
持病はいつ伝える?――私もどっちが正解かはわからない
では、いつ伝えるべきなのか?
タイミングは大きく分けて三つあります。

入会・プロフィール段階、仮交際で関係ができてきた後、そして成婚直前・成婚後です。
先に本音を言っておきます。
私もどっちが正解かはわからない。
現場を二十年近く見てきて、14社に話を聞いて、それでもなお「これが絶対の正解です」とは断言できません。
この葛藤を消して綺麗にまとめるのは簡単なのですが、それでは読者への嘘になります。
だからこそ正直に書きます。
入会段階で全部開示すれば、確かに信頼は守れます。
でも、さっきの「200人が10人になる」という現実が待っている。
お互いの関係を築く前に、存在を知ってもらう機会そのものが激減してしまうのです。
バカ正直に誠実にやった人が、一番割を食う構造がここにあります。
じゃあ仮交際まで待てばいいのでしょうか?
実のところ、一度会ってもらえて人となりを分かってもらえた後なら、受け入れてくれる人は意外と多いのです。
5社目の相談所はこう言っていました。
後出しは本来いけないのですが、交際をある程度継続して信頼関係ができた後に打ち明けると、理解してくれる方は意外と多いです。ただ、成婚ギリギリ、または成婚後ですと逆に信頼を失い、揉めるケースが多くなるので、打ち明けるタイミングは重要だと思います。
この「後出しは本来いけないのですが」という前置きに、業界人の葛藤がすべて詰まっています。
本来いけないと分かっている。
でも、タイミングを間違えると、会員さんが誰にも会えないまま終わってしまう。
そのあいだで苦しみながら判断しているのが、我々現場の人間なのです。
最悪なのは三つ目。
成婚ギリギリ、あるいは成婚後に持病が発覚するケースです。
これは、ほぼ確実に揉めます。
そんな大事なことを、どうして今まで隠していたのですか?
当然なります。
積み上げてきた信頼関係を全部なかったことにされるほどの重さがあります。
ちなみに「ずっと隠し通しましょう」と言うカウンセラーもいると聞きますが、そういうのは論外です。
会員さんを守っているふりをして、いずれ必ず破綻する時限爆弾に無防備で突っ込ませているだけですから。
だから繰り返しますが、私もどっちが正解かはわかりません。
ただ、14社の話を聞いて一つだけ確信したことがあります。
答えは「関係ができた後の、成婚よりは手前」のどこかにある。
これは机上の空論ではなく、14社分の葛藤を聞いた末に残った、現場発の切実な仮説です。
「持病」とひと括りにしない――婚活で重く扱われるもの、そうでないもの
そもそも「持病」とひと言で言っても、その中身や生活への影響度は全然違うわけです。
読者の皆さんの判断に直結する部分なので、婚活市場での扱われ方の違いについて踏み込んで話します。

相談所の現場で感じるのは、普通の恋愛結婚だったら全然気にならないようなことが、婚活市場では大げさに気にされてしまうという現象です。
例えば、色覚異常や緑内障、片側の目の視力が低いといったケース。
職場の同僚が同じ話をしても「へえ、そうなんだ」で終わることが、プロフィール欄に書いた瞬間に重篤な問題として扱われます。
ここは不条理を感じる部分ですが、事実です。
最近多いのが、睡眠薬や精神安定剤を服用されている方です。
ある相談所によると、精神疾患が背景にある場合は、相手を好きになっていても悩んだ末にお断りする方が多いのだそうです。
断り文句はだいたい決まっていて、
今は落ち着いていても、結婚して生活が変わるとどうなるかわからないので
――。
好意はある。
でも、将来の不確実性までは背負いきれない、という苦渋の判断です。
別の相談所の方は、もっとはっきり言っていました。
癌やうつ病や、注射しなければならない糖尿病の男性に、うちの女性会員でお見合いを受けたりお申し込みをしたりした方はほぼ見たことがありません。
また別の相談所では、「糖尿病で透析等結婚生活に支障が出ると予想される疾患、遺伝性疾患、精神疾患――上記の場合は厳しいです」と、明確な線引きを明言していました。
耳の痛い厳しい話ですが、ここを曖昧にして「どんな病気でもみんな大丈夫ですよ」と言うほうが、むしろ当事者に対して不誠実だと思うのです。
自分の戦場がどこにあるかを知らないと、正しい戦い方は決められませんから。
14社の結婚相談所に聞いた本音――三つの派閥と、禁じ手の告白
14社に直接話を聞いてみたところ、相談所としての立場は大きく三つに分かれました。
早期開示派、関係構築後派、ケースバイケース派

早期開示派(誠実優先)は、「隠し切れないものを最初から隠すのは、そもそも婚活の戦略として成立しない」という厳しい立場です。
12社目はこう言い切っていました。
相談所によっては、お見合い1件で1万円の料金を払っている人もいるんですからね。「隠していたらお見合いしてもらえないと思って……」なんて言い訳は通用しませんよ。
高い料金を払い、貴重な時間を使っている相手への誠意。
この視点は非常に重いです。
関係構築後派(現実優先)は、「会う機会がなければ、誠意を示す場すら生まれない」という立場です。
「持病を持っているから関係が壊れたという話は、あまりないかもしれません」という現場での観察が根拠になっています。
先ほどの「交際を継続して信頼関係ができた後に打ち明ける」と言っていた5社目もここに入ります。
理想と現実の両義性を引き受けた派閥です。
ケースバイケース派は、入会段階で個別に判断する7社目のような相談所です。
「お相手に対して明らかにデメリットがある分、他で補えるメリットを作りましょう」「それすら努力できないのは自分勝手な婚活ですよ」と、会員にはっきり伝えます。
厳しい言葉ですが、筋は通っていますし、一種の愛情でもあります。
そして、このどの派閥にも括れない、
隠蔽派の反省告白
。
これは、なかなか他では聞けない生々しい話です。
私は反対に隠してお見合いしていたことがあります。相手には申し訳ない気持ちはありますけど、その後のクレームはどんなことでも受ける覚悟で、その時は突っ走りました。とにかくその会員さんにお見合いをしてもらいたくて。こちらの勝手な思いでした。今となっては反省してますが、そのおかげで成婚できた事例もあります。
私はこれを、とても正直な告白だと思います。
ルール違反だと善悪で裁くのは簡単なのですが、目の前の会員さんにどうにかして出会いを届けたい、という強い衝動が相談所側にも確かにあるのです。
業界内でこれだけプロの意見が割れている。ということはつまり、最終的には当事者が自分自身で考えて判断するしかない、ということでもあります。
持病があっても勝率を上げる、現実的な婚活の戦い方
じゃあ、当事者として具体的にどう動けばいいのか?
現実的な戦い方の話をします。

- 開示するときは、病名だけをぽんと置かない。「結婚生活にどう影響するか、しないか」を、相手が聞きたい順に言語化する。
- 結婚相談所だけに絞らない。別ルートを、業界の中の人自身が勧めるという異例の状況がある。
- 条件が重なる相手を戦略的に探す。これは14社の多くが共通して口にしたこと。
一つ目。
「服薬は続いていますが、食事や日常の行動に制限はありません」というように、相手が抱く不安をこちらから先回りして潰しにいく感覚が大切です。
病名だけをポツンと置くと、相手の想像力がいちばん悪い方向へと膨らんでしまいます。
二つ目は、今回の取材でいちばん意外だった本音です。
結婚相談所というのは、本来「プロフィール提出型の婚活」を売りにしているビジネスです。
それなのに、自社に来る客を減らしかねないアドバイスを、複数の相談所が口にしたのです。
「結婚相談所ではプロフィールに記載が必要なため難しいので、婚活パーティーのほうがチャンスあり」――14社のうち複数が、ほぼ同じ趣旨のことを言っていたんです。
これは、普通なら絶対に言わないことです。
自社の利益に反しますから。
それでも言うということは、業界の中にいるプロほど「このプロフィール至上主義の土俵では、当事者が勝ちにくい」という構造を熟知しているということなのです。
プロフィールで一瞬で選別される前に、まずは人として会って直接話せる場に行くことは、当事者にとってはやはり強い戦略になります。
三つ目。
これも14社の方が共通して言っていたことです。
「譲れない条件」を互いに抱えている相手同士のほうが、実は話が早い。
男性なら、同じように持病のある女性、同年代や年上の女性、再婚・子連れの女性、あるいは信仰を持っている女性など。
お互いに乗り越えてきた背景があるからこそ、小さな条件で切り捨てない、深い関係が作りやすいのです。
そして、私がここで一番伝えたいのはここです。
最初からバカ正直に伝えたばかりに、もし恋愛関係になっていれば許容できたかもしれないのに「まだそこまでの気持ちになっていないから」と断られてしまう。
それって、持病がある人だけでなく、相手にとってもすごく勿体ないことではないかと思うのです。
「断る側が得をしている」わけではありません。お互いに、相手の深い部分を知るにはタイミングが早すぎただけなのです。そう捉えなおすだけで、「隠している罪悪感」は少し軽くなるはずです。
甘い言葉は言えない。それでも、話しておきたいことがある
最後に、一人の人間として正直に書きます。
「持病があっても大丈夫ですよ」とは、私は軽々しくは言えません。

ここまで真剣に読んでくれたあなたに、都合のいい励ましの言葉だけで締めるのは、この記事への裏切りだと思うからです。
200人が10人になる残酷な現実はあるし、癌やうつ病、重い糖尿病の男性にお見合いが入りにくい現実も確かにあります。
それは、14社の本音として聞いてきた紛れもない事実です。
そのうえで、どうしても伝えておきたい話があります。
去年、ある相談所から聞いた話です。
精神疾患や重めの糖尿病といった、かなり重い持病がある男性会員さんが2名、素晴らしいパートナーと出会って成婚退会されたそうです。
おふたりとも、お相手から強い恋愛感情を持たれての結果だったといいます。
数字の上では不利でも、こういう奇跡のような結末は、毎年どこかで確実に起きています。
全員が絶対に大丈夫とは言いません。
だけど、可能性は決してゼロではない。
このリアルな距離感は、どうか覚えておいてほしいのです。
持病を抱えて生きるだけでもしんどいのに、結婚について悩みだすと本当に不安で押しつぶされそうな気持ちになってしまうもの。
その気持ちは、私にも少しわかる気がするのです。
証拠として、一つだけ自分の話を
実は、私の妻にも難病があります。
だけど私たち夫婦は、本当に幸せな毎日を送っています。
これはお涙頂戴の美談として書いているのではなく、「だから誰でも絶対に大丈夫」と無責任に言いたいわけでもありません。
ただ「こういう夫婦が実際にここにいる」という一つの揺るぎない事実として置いておきたいのです。
婚活の現実が厳しいのは嘘じゃない。
でも同時に、この幸せも嘘じゃない。
その両方を抱えたままで、この話を終わらせたいと思います。
だから、どうか諦めずに、自分に合った戦い方で最初の一歩を踏み出してみてください。





