バツイチ男性のトラウマ!托卵女子の恐怖
大の男が「心が壊れそう」と漏らした夜のこと
38歳の男性が、私の前でぽつりと「今のままでは心が壊れそうです」と漏らしました。
仕事は順調。見た目も悪くない。

バツイチで、二人の子供と離れて暮らし、養育費は毎月8万円払っている。
外から見れば、ちゃんと生活を立て直しているように見える男性です。
なのに彼は、3年前からほとんど眠れていませんでした。
理由を聞いて、私は言葉を失いました——彼が3年間愛してきた長男は、生物学上、彼の子供ではなかったのです。
托卵なんて、ドラマや小説の中だけの話だと思うかもしれません。でも少なくとも、結婚相談所の現場で話を聞いていると、こうした相談は以前より耳にするようになっています。
「え、そんなことが本当にあるんですか?」と言いたくなるような相談が、実際にある。
今日の話も、その一件です。
38歳のバツイチ男性が、婚活を始めたいということで、私のところへ来ました。
彼は、前妻との間に子供が二人いると言うんです。
当時の子供の年齢は10歳と8歳。
3年前に離婚して、今は奥さんが子供を育てている。
彼は養育費として、二人分で毎月8万円を支払っている、という話でした。
そんな彼が、私のところに来て婚活しようと思った理由がね。
今のままでは心が壊れそう
だったんです。
新しい出会いをして、新しい家族を持ちたい、と。
大の男がですよ。
「心が壊れそう」って、ものすごい言葉です。
托卵——自分の子供だと思って育ててきた子が、実は実の子供ではなかった、というケースのことを指します。
彼の人生がなぜここまで壊れたのか。発端は、長男の小さな事故でした。
長男の事故で発覚した「親子の可能性0%」という現実
彼の話を順番に書いていきます。
元妻とは、友達との飲み会で知り合って、すぐに仲良くなったそうです。

付き合って半年くらいした頃、彼女が妊娠した。
責任感の強い彼ですから、じゃあ結婚しようということでプロポーズし、両親にもきちんと経緯を伝えて、結婚式を挙げました。
無事に長男が生まれて、2年後に長女も生まれた。
仕事は順調、夫婦仲も円満。
どこから見ても幸せな家族でした。
ある日、長男が自転車に乗っている時に転び、頭を電柱にぶつけて、額を5針縫う大けがをしたそうです。
病院に駆け付けた彼は、書類に書かれた息子の血液型を見て、固まりました。
妻から聞いていた血液型と違ったのです。
彼はA型、妻はO型、息子はB型だったという。
A型の父親とO型の母親から、B型の子供は生まれない。
中学校の生物で習う話ですよね。
一瞬で分かってしまった。
血液型の違いを妻に問いただすと、「そんなわけはない。病院の間違いかもしれない」と言う。
私かあなたの血液型が違うのかも、と。
確かに、その可能性はゼロではありません。
でも、彼の中では昔から違和感がありました。
妹の顔は彼と似ているけれど、長男は顔も性格もまったく自分と似ていない……と。
それでも、長男のことは無条件で可愛い。
心から愛していた。
けれど、その一件があってから、妻に対して不信感しか持てなくなりました。
彼がDNA鑑定をしたいと言うと、そんなわけないのだから必要ない、と妻は受け付けない。
大げんかにもなりました。
結局、彼は長男が寝ている時に、綿棒で口内から組織を採取し、妻に内緒で長男とのDNA鑑定をしました。
結果、彼と長男の「生物学上の親子である可能性は0%」という報告だった。
つらいですよね、これは。
元妻に鑑定結果を見せて問い詰めると、最後まで「そんなわけない」の一点張り。
もちろん人によります。
ただ、彼の元妻の場合は、最後まで認めようとしなかった。
どこまで行っても、話が進まなかったのです。
ここまで読んで、ああ妻への憎しみが彼を壊したんだな、と思った人もいるかもしれません。
でも彼が本当に苦しんだのは、別の感情でした。
妻への憎しみより、実子じゃない長男への愛が苦しかった
ここを書くのが、いちばん難しいです。
なぜなら、彼を本当に苦しめたのは、怒りではなく、愛情だったからです。

鑑定結果が出たあと、彼の中で妻への愛は皆無になりました。
憎しみしかなくなった、と本人も言っていました。
それは、まあ、そうだろうと思います。
でも、長男への気持ちはどうだったのか。
——変わらなかったんです。
DNA鑑定書を握りしめても、長男の顔を見たら、やっぱり可愛い。
笑った顔も、眠っている顔も、これまで抱きしめてきた息子そのものでした。
「お父さん」と呼ばれたら、抱き上げてしまう。
生物学上は他人の子供。
書類の上では他人の子供。
それでも彼にとっては、生まれた瞬間から自分の息子だった子供なんです。
そこで彼は、離婚をするべきか、子供のためにこのまま家族でいるべきか、悩みました。
離婚して、長男を妻が、長女を彼自身が引き取ることも考えたそうです。
けれど、仲の良い兄妹を離すことだけはできなかった。
長男と長女は、本当に仲がいい兄妹だったそうです。
引き離す決断は、どうしても下せませんでした。
結局、彼は離婚を選び、可愛い二人と離れることを選んだのです。
ここからの3年間が、彼を壊していきました。
毎晩、布団の中でリピートされる「お父さん」
毎日毎日、離れてしまった子供のことを考えてしまうそうです。
毎晩布団に入ると、長男の「お父さん」という声が頭の中でリピートされて、朝まで目が冴える。
寝返りを打つたびに、長男の小さい頃の表情がフラッシュバックする。
眠れないまま朝になって、出勤して、職場で資料を見ている時に、突然涙が出てくるそうです。
本人としては職場で泣くわけにはいかないと思い、トイレの個室に駆け込んで、声を殺して、ティッシュで拭く。
それが3年間、続いた。
休日も同じです。
買い物に行って、子供連れの家族とすれ違うだけで、息ができなくなる。
長男と同じくらいの年齢の男の子を見ると、その場でしゃがみ込みそうになる。
長男も長女も、彼を本当の父親だと思っている。
離婚を選んだ自分の判断は、正しかったのか?
間違っていたのか?
あのまま自分だけが納得して我慢していたら、二人の子供は幸せだったんじゃないか?
そうやって悩んで悩んで、自己嫌悪になってしまっている。
子供を捨てた自分の選択は間違っているのではないか、自分はすごくひどい人間なのではないか。
もう、本当に落ち込んでいるのが、ひしひしと伝わってきました。
責任感の強い人ほど、こうなります。
托卵されたという事実だけなら、怒りで片付くかもしれない。
妻を憎み、慰謝料を取って、終わり。でも彼の場合は違いました。
3年間、毎晩、自分が捨てたわけではない子供を「捨てた」と感じ続けたのです。
彼は今でも、何をしていても、いつでもどこでも子供の顔がちらつくと言うんです。
眠れなくて、職場でも突然涙が出てくると言う。
この悩みがずっと続くことがつらい…
そう言って、彼は私の前でうつむきました。
これは、誰もバシッと正解なんて出せません。
離婚した彼が悪いとも、子供を思い出して苦しむ彼が弱いとも、私は思えませんでした。
眠れない、職場で突然涙が出る——この状態のまま、彼は「新しい出会いがほしい」と私のところへ来たのです。
托卵のトラウマを抱えたまま婚活してはいけなかった理由
正直に書きます。
彼が私のところに来た時、私はすぐに婚活を始めませんでした。

プロフィールも作らなかった。
お見合いの段取りもしなかった。
「新しい人と出会えば、忘れられる」「新しい家族を作れば、楽になる」——そう思って結婚相談所の扉を叩く人は多いです。
彼もそのつもりで来ていました。
でも、それは、きっと新しい恋愛や婚活をしても、忘れられるものではないと思うよ、と伝えました。
彼の場合は、婚活より先に心の回復が必要だったのです。
眠れない人は、お見合いで本来の自分を出せない
なぜか。
眠れない人は、お見合いで本来の自分を出せません。
職場で突然涙が出る人は、初対面の女性の前でも感情が揺さぶられてしまうかもしれない。
仮に交際まで進んでも、心が3年前の長男のところに置きっぱなしの人と、相手の女性は本当に向き合えるのか。
それ以前に、彼自身がもう一度誰かを「家族」と呼ぶことに、心が耐えられるのか。
ここを見ないまま婚活を進めるのは、本人にとっても、出会う相手にとっても危ない。
そう思いました。
ここは、結婚相談所のカウンセラーの大事な見極めポイントです
「眠れないんです」と言われた瞬間、私は一度、自分に問いかけます。
あ、これは私の範疇なのか? それとも、専門の先生につないだ方がいい状態なのか? と。
ここを勘違いして、全部抱え込む人が一番危ないんです。
私の判断軸はシンプルです。
眠れない。ご飯が喉を通らない。仕事中に涙が出る。
そういう言葉が出た時点で、私は「これはただの婚活相談ではないな」と思います。
ここで無理に婚活の話を進めたら、本当に危ない。
もちろん状態によりますが、睡眠に不安がある程度なら、様子を見ながら婚活面の伴走はできます。
でも向精神薬を常時服用している、鬱状態と診断されている、精神疾患の診断書がある——このあたりは、私だけで抱えるのではなく、心療内科や精神科など専門家の力を借りてもらう。
慰謝料や嫡出推定など法的な方向に進みたい人なら、弁護士へつなぐ。
実は、悩んでいることにも、悩んでいる原因にも気付いていない人も多いんです。
彼の場合も、最初は「子供と離れた寂しさ」としか自分では言語化できていませんでした。
父親像の刷り込みまで遡ってほぐすには、婚活カウンセラーではなく、心の専門家の力が必要です。
私は婚活カウンセラーで、心理カウンセラーではありません。
婚活の相談には乗れる。プロフィールも書ける。
お見合いの組み方も、交際の進め方も伝えられる。
でも、3年間こびりついた長男への罪悪感をほぐす技術は、私の専門外です。
ということで、大阪にいる、私の信頼するカウンセラーのもとに行ってもらいました。
そこで、2時間のカウンセリングを受けた。
内容は私は知りません。
本人は少し気が楽になった、と言っていました。
続けてプロのカウンセリングを受けたいということだったので、いったん彼をカウンセラーに任せることにしました。
まずは心を楽にすることが先決だと思ったからです。
それから婚活をしようね、と判断しました。
では、その3ヶ月で彼に何が起きたのか?
週1回・3ヶ月・20万円のカウンセリングで彼が取り戻したもの
3ヶ月後、最初に変わったのは、声のトーンでした。
最初は電話口でも息が詰まっている感じだったのに、ある日ふっと、普通の雑談ができたんです。

それを聞いた時に、「あ、この人、少し戻ってきたな」と思いました。
久しぶりに会うと、表情も見違えるように柔らかくなっていました。
具体的に言うと、まず眠れるようになった。
次に、職場で突然涙が出ることがなくなった。
そして私と話している時に、長男の話題を出しても、息を詰めずに話せるようになった。
長男の話題を出しても、胸が締め付けられる感覚が8割くらい減ったと、本人が言っていました。
忘れたわけではありません。でも、思い出しても壊れなくなった。
劇的なドラマではありません。
地味な、でも本人にとっては大きな変化です。
1時間1万円、週1回、3ヶ月で20万円
プロのカウンセリングに週1回、3ヶ月くらい通いました。
ちなみに1時間1万円くらい費用がかかるので、合計で20万円ほどかかっています。
決して安くはありません。誰にとっても簡単に出せる金額ではない。
だからこそ、誰に相談するかは慎重に選ぶ必要があります。
でも彼は、この20万円を「人生でいちばん意味のある金の使い方だった」と言っていました。
父親像の刷り込みに気づいた瞬間
3ヶ月後、私は改めて彼に聞きました。
カウンセリングを受けて、どこが変わったのか?
どういうことをしたのか?
彼はまず、子供の頃からの経験を振り返りながら、人生を見つめ直したそうです。
彼にとって「父親」という存在は、思っていた以上に大きかった。
自分の父親との関係の中で、「父親とはこうあるべきだ」「父親は子供と一緒に暮らすべきだ」という強い理想像を作り上げていたらしいのです。
だから、その理想像を裏切った自分が許せなかった。
自分が信じてきた良い父親像と、子供にとって本当に必要な父親像は、決して同じとは限らない。
そう彼は言いました。
子供にとって良い父親になるためには、これからどれだけ良いことをしてあげられるかだ、と。
そして、彼ははっきりと、こう語ってくれました。
一緒に生活できないのは申し訳ないけれど、妻との関係が戻らない以上、離婚は仕方のないことなのだ、と決心できました。
3年間、毎晩責め続けた自分を、彼はようやく赦したんです。
そこから、改めて婚活を始めました。
正直なところ、バツイチで養育費を毎月8万円支払っているという条件は、女性側から見ると軽くはありません。
年収から固定で8万円が消えるという事実は、結婚生活の家計に直結しますからね。
一度、バツイチ子持ちの女性といい感じになったこともありましたが、その女性とは最終的にうまくいかず、流れました。
でも、それ以外の彼は申し分ない男性です。
落ち着きがあって、誠実で、自分の過去を逃げずに話せる。
年下の女性の中には、その「過去を抱えた男性の落ち着き」に惹かれる人もいます。
最終的には、彼の過去も含めて受け止めてくれる、初婚の年下女性と結婚しました。
本当に、よくここまで来たなと思いました。
でも本人にしたら、3年間ずっと自分を責めてきた末の、やっとの結婚です。
浮かれた感じは一切ありません。
静かに、深く、息をついたような結婚でした。
ただ、私が彼にしたことは、彼の心を治したことではありません。
今の彼に必要なのは婚活ではなく専門家だと見極め、良い専門家につないだだけです。
婚活相談所のカウンセラーが見極めるべき「自分の限界」
ここからは、私たち側の話を少しだけします。
これはカウンセラー側の話でもありますが、相談所を選ぶ人にも関係のある話です。

結婚相談所のカウンセラーは、人の人生に深く関わる仕事です。
だからこそ、自分が婚活カウンセラーとして力になれるのか、他の協力が必要なのか?
そこを見極めないといけません。
ここを勘違いして、全部自分で抱え込もうとするカウンセラーが、いちばん危ない。
簡単な心理セラピー講座を受けただけで、専門外の領域まで「私が全部聞いてあげますよ」と抱え込んでしまう人もいます。
あれは、本当に注意しないといけません。
深いトラウマを素人が触ると、相談者をもっと壊します。
私の判断軸は、先ほども書いた通りシンプルです。
眠れない、ご飯が喉を通らない、仕事中に涙が出る——この言葉が出た時点で、私は一回立ち止まります。
これは私の範疇か、専門家か、医療か、法律か。
仕分けるのが私の最初の仕事です。
優秀な婚活カウンセラーがいるのと同じように、優秀な心理カウンセラーもやはりいます。
だから、そういう専門家のネットワークも必要なんです。
結婚相談所を選ぶ立場の人にも、これは伝えたい。
心の専門家へつないでくれる相談所と、そうでない相談所がある、ということを。
無料相談の時に、「婚活以外の悩みが強い場合、専門家につないでもらえますか?」と聞いてみるだけでも、その相談所の姿勢は見えます。
まとめ|托卵で壊された人生でも、再婚の前に心は立て直せる
最後にもう一度書いておきます。
彼が取り戻したのは、復讐でも、慰謝料の勝訴でもありませんでした。

3年間、毎晩自分を責めていた声が、少し静かになった。
たったそれだけに見えるかもしれません。
でも、その声が静かになるだけで、人は次の人生に足を踏み出せることがあります。
この男性の場合、婚活より先に心の回復が必要だった。順番を間違えたら、新しい出会いも壊していたと思う。
一緒に生活できないのは申し訳ないけれど、妻との関係が戻らない以上、離婚は仕方のないことなのだ、と決心できました。
3年かけて、彼はこの一文に辿り着きました。
子供を愛してしまった過去も、離れる決断を下した自分も、否定しなくていい。
今回私がやったことは、良い専門家を紹介すること。
それくらいでした。
托卵で壊されたと感じている人へ。
自分を責める前に、まずは専門家に頼っていい。
壊れた心のまま、無理に前へ進まなくていい。
まずは回復する。婚活は、その次でいいんです。
今日できることは、信頼できる専門家に一度話してみることです。





